新居に越してきてから早三年が経ち、ようやく生活に慣れてきた頃のことでした。リビングの入り口にあるドア枠の角から、天井に向かってスーッと一本の白い筋が走っているのを見つけました。最初は埃か何かだろうと楽観視していましたが、近づいてよく見てみると、それは紛れもない壁紙のひび割れでした。せっかくのお気に入りの空間に傷がついたようで、見るたびに溜息が出る毎日。業者を呼ぶほどのことではないけれど、このままにしておくのも忍びない。そう考えた私は、意を決して自分で補修してみることにしたのです。まずは情報収集と道具の調達です。ホームセンターの補修コーナーに行くと、予想以上に多くの種類の壁紙用充填剤が並んでいました。我が家の壁は完全な白ではなく、少しベージュがかった織物調のクロスだったので、サンプル帳をじっくりと見比べ、最も近い色味のチューブを選びました。作業当日、緊張しながらひび割れの部分にノズルを当てました。最初は力加減が難しく、少し盛り上がりすぎてしまいましたが、説明書にあった通りに濡らしたスポンジで優しく叩くように馴染ませていくと、驚くほど自然に壁の凹凸に溶け込んでいきました。余分な糊を拭き取った後、乾くのを待って確認してみると、光の当たり具合によっては全くひびが見えなくなり、まるで最初から何もなかったかのような仕上がりに自分でも驚きました。この作業を通じて気づいたのは、壁紙のひび割れを直すことは単なる家の修理ではなく、自分たちの住まいを自分たちの手でケアするという深い愛情の表現なのだということです。これまで「どこか壊れたらプロに任せればいい」と思っていましたが、小さなことなら自分で解決できるという自信が持てたことで、家に対する愛着がさらに一層深まりました。その後、和室の隅にも小さな隙間を見つけましたが、今度は焦ることなく鼻歌まじりに補修することができました。住まいも人間と同じで、時とともに少しずつ変化していくものです。その変化を恐れるのではなく、メンテナンスという対話を通じて長く付き合っていきたい、そんな風に思わせてくれた初めてのDIY体験となりました。
我が家の壁に現れたひび割れを自力で直してみた体験記