マンションの壁紙に、子供がつけた落書きや、家具をぶつけてできた小さな傷。あるいは、長年の湿気で継ぎ目が少しだけ剥がれてきた。このような「ちょっとした悩み」のために、壁全面を張り替えるのは大掛かりすぎるし、費用もかかる。そう感じている方も多いのではないでしょうか。そんな時に役立つのが、全面張替えに頼らない、賢い「部分補修」のテクニックです。大掛かりなDIYに踏み切る前に、まずはこれらの方法を検討してみる価値は十分にあります。最も手軽なのが、「壁紙補修シール」の活用です。これは、壁紙の傷や汚れの上から貼るだけで、簡単にかくせる便利なアイテム。最近では、100円ショップでも手に入りますが、より完璧な仕上がりを目指すなら、ホームセンターで販売されている、色柄だけでなく壁紙特有の凹凸(エンボス)まで再現された製品を選ぶのがおすすめです。傷の大きさより一回り大きくカットし、角を丸くしておくと剥がれにくくなります。次に、もう少し本格的なテクニックが、「部分張替え」です。これは、傷んだ部分だけを切り抜き、そこに新しい壁紙をはめ込む方法で、「切り込み貼り」とも呼ばれます。まず、補修したい部分より少し大きめにカットした新しい壁紙を、傷の上にマスキングテープで仮止めします。そして、その新しい壁紙の縁に沿って、下の古い壁紙ごと、カッターで四角く切り込みを入れます。切り込みを入れたら、仮止めした壁紙と、下の古い壁紙の両方を剥がします。すると、壁には新しい壁紙がぴったりとはまる、同じ形のスペースができるはずです。そこに、のりをつけた新しい壁紙をはめ込み、ローラーで圧着すれば、補修跡がほとんど分からない、美しい仕上がりになります。ただし、この方法が使えるのは、同じ壁紙が手元に残っている場合に限られます。新築時にもらった壁紙の余りは、捨てずに保管しておくと、いざという時に役立ちます。全面張替えという大手術の前に、まずはこうした「応急処置」で、住まいの美観をスマートに保つ。それもまた、賢い暮らしの知恵なのです。