フローリングの洋室を和の空間に変えたいと考えたとき、最も手軽な方法として選ばれるのが置き畳やユニット畳を床の上に直接敷く手法です。しかし、この便利なインテリアの裏側には、日本の住宅環境ならではの深刻なデメリットが潜んでいます。最大の懸念事項は、フローリングと畳の間に発生する湿気とカビの問題です。畳には本来、湿気を吸放出する調湿機能がありますが、裏面が合成樹脂や防滑素材で加工されている置き畳を密閉性の高いフローリングの上に敷き詰めると、空気の通り道が完全に遮断されてしまいます。特に梅雨時期や夏場、あるいは冬場の結露が発生しやすい季節には、床面と畳の境界に湿気が滞留し、気づかないうちにカビが繁殖する温床となります。数ヶ月後に畳をめくってみたら、下のフローリングが真っ黒に変色していたという事例は決して珍しくありません。また、カビが発生すれば、それを餌にするダニの繁殖も招くことになり、健康被害のリスクも高まります。さらに、フローリング自体の変色や傷も無視できないデメリットです。畳の裏面に滑り止め加工が施されている場合、長期間の荷重によってその素材が床に固着してしまったり、逆に滑り止めがない場合は畳が動くたびに床面と擦れて細かい傷がついてしまったりします。さらに、日光の当たり方によって畳を敷いている部分とそうでない部分で、フローリングの日焼けに差が出てしまい、畳を取り除いた後にくっきりと跡が残ってしまうこともあります。もう一つの大きな問題は、部屋の中に生じるわずかな段差です。薄型の畳であっても、フローリングの上に敷けば15ミリから30ミリ程度の厚みが出ます。この中途半端な高さが、歩行時のつまずきの原因となり、特に高齢者や小さな子供がいる家庭では思わぬ事故に繋がる危険性があります。ドアの開閉範囲に畳がかかってしまう場合は、物理的に敷くことができなかったり、ドアの底部と干渉して傷がついたりすることもあります。掃除の手間が増えることも、日々の暮らしの中では大きな負担となります。畳の継ぎ目には埃や髪の毛が溜まりやすく、フローリングのようにワイパー一つで掃除を終わらせることができません。畳を一枚ずつ持ち上げて下の床を掃除し、湿気を飛ばすために陰干しをするというメンテナンスを怠ると、上述の湿気トラブルを加速させることになります。和の安らぎを手に入れるためには、こうした目に見えないリスクを正しく理解し、定期的な手入れを覚悟しなければなりません。
フローリングの上に畳を敷く際のカビや湿気の注意点