築四十年を超えた実家は、あちこちにガタが来ており、今のままでは両親の老後を支えるにはあまりに不自由な状態でした。そこで私は、親から生前贈与を受けて大規模なリフォームを行い、将来的に私がその家を引き継ぐことを前提に実家を再生させる決断をしました。ここで私が選択したのが「相続時精算課税制度」です。通常のリフォーム資金贈与の特例だけでは、私が計画している一千五百万円という多額の援助をカバーしきれなかったため、この制度を使って二千五百万円の特別控除枠を利用することにしました。この決断に至るまでには、家族で何度も話し合いを重ねました。相続時精算課税制度を選択すると、一度きりではなく、その後その親から受ける贈与はすべてこの制度が適用されることになり、毎年百十万円の基礎控除が使えなくなるというデメリットがあるからです。しかし、目下の最大の問題は、古い家を安全で快適な住まいに作り変えるための資金をどう確保するかでした。親の預貯金を活用しつつ、私の名義で責任を持ってリフォームを監修するためには、贈与という形を取るのが最も透明性が高いと考えたのです。この制度を利用して贈与を受け、耐震補強と断熱改修、そしてバリアフリー化を一気に行いました。申告にあたっては、税理士のアドバイスを受けながら、贈与税の申告書を慎重に作成しました。将来、親が亡くなったときには、この一千五百万円を相続財産に足して相続税を計算することになりますが、その時の建物の評価はリフォーム後の価値ではなく、贈与時の価値で計算されるため、実は資産価値を大幅に高めつつ相続税の評価額を抑えられるという隠れたメリットも享受できました。私にとってこの制度の選択は、単なる税金対策ではなく、実家という大切な場所を次世代に繋ぐための「覚悟の証明」でもありました。親が生きている間に、親のお金を使って、親が喜ぶ家を、私が責任を持って作る。そのプロセスを税制が支えてくれたおかげで、親孝行と将来の生活基盤の確保を同時に達成することができました。制度の仕組みは複雑で最初は戸惑いましたが、自分たちのライフプランに合致した選択をすることで、重い税負担に怯えることなく、前向きに住まいの再生に取り組むことができたと感じています。
相続時精算課税制度を選んで実家を再生させる私の決断